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masayoga column
アシスト・アジャストメント論
「アシスト・アジャストメント」について、いろんな角度からの考察をお送りしたいと思います。
「アシスト・アジャストメント」は、ヨーガのクラスで、ティーチャーが生徒のアーサナ(ポーズ)がさらに効果的なものになるためのサポートを意味します。
そして、「アシスト・アジャストメント」は直接、一人の生徒(集合的である場合もありますが)にアプローチするもの。
生徒に残る影響は計り知れません。
特に体感を通した体験は人の心に大きなインパクトを与える。
アシスト・アジャストメントは、人の人生を変えるといっても過言ではありません。
本当にあなたの一手や一言が人の人生を変えてしまうほどの影響力を持つのです。
だからこそ、一回一回が真剣勝負。
「アシスト・アジャストメント」の必須条件は、
「一回一回のその一手やその一言が、確実に生徒の成長と進化に繋がるものであること」。
これができないなら、するべきではない。
そこまでの信念を持つこと。
だから、今日の「ヨガ講師養成講座」でも、一人ひとりが完璧にできるようになるまで、全員の在り方を細かく見させてもらいました。
時間がかかろうともそこはプロとして完璧にやります。
私の好きなヨーガティーチングの心得で、とある文章があって、
「いつかこの先、生徒は、あなた(ティーチャー)のことを忘れるでしょう。
いつかこの先、生徒は、何をしたかも忘れるでしょう。
だけど、この先、生徒の心身の中には、あなたと共に過ごしたクラスでの体験は一生残ります」
ヨーガや瞑想を「教える」ということは本当に素晴らしいことだと日々感じています。
安全な環境の中で、生徒が一人では行けないことまで、ティーチャーが介入することで、行ってもらう。
その体験は、二人で初めて可能となる感動体験です。
<みんなのアシスト・アジャストメント>
先ほどの投稿からだと、「アシスト・アジャストメント」というと、ヨーガ・ティーチャーの向けての発信のように思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
「アシスト・アジャストメント」は、ヨーガを深めたい方、アーサナを深めたい方、あるいは人間関係で悩んでいる方などにも、「気づき」のポイントが多いのではないかと思います。
アシスト・アジャストメントを習得するには、
・アーサナのアライメントの確実な理解
・エネルギー論の理解
・重力と抗力の関係を読み取る見識眼
・「アシスト・アジャストメント」をする側の身体開発
・脱力感覚の理解と体得
・場の理論
・相手の内部感覚を読み取る技術
・空間を読む力の理解と体得
・マインドエンジニアリングの理解
・ティーチャーとしての在り方論と教育論
・ゴール理論とホメオスタシスの理解と活用
・自分の対人関係の癖に気づくこと(自己理解)と解放
・自他一如の理解
などをマスターする必要があります。
小手先のテクニック論ではないのです。
単に、技術としての形だけを学んでも、上記のようなその裏にある広大な情報空間を持った上で、それをする人と、そうじゃない人は雲泥の差がある。
人生とは関係性。
そして、特に大切なのは人間関係ではないでしょうか?
「縁起」の記事でも書きましたが、あなたがあなたで居られるのは、その人間関係があってのこと。
だから、アシスト・アジャストメントを学ぶことは、ある意味、人生論を学ぶに等しいのです。
「アシスト・アジャストメント」はヨーガティーチャーだけのトピックではありません。
まさに現代を生きるあなたのためのトピックです。
<アシスト・アジャストメントの目指すところ>
ヨーガ・ティーチャーとして、生徒を導く際、どこがゴールでしょうか?
いろんな意見があるでしょうが、私の場合は、生徒の「自立」です。
そして、生徒の「自己効力感」をあげること。
「自己効力感」とは、英語では「エフィカシー」と言って、自分のゴール達成のための能力に関する自己評価のことを意味します。
つまり、「私はできる!」という確信。
そのため、アシスト・アジャストメントで、とっても大切なのは、3つの要素。
(1)主体性
(2)再現性
(3)自立性
の担保です。
生徒にアジャストメントするとき、ぱっと気づきの起きないような変化を加えてしまって、一体何が起きたのかわからない。
これでは、生徒はこれを再現することができないのです。
あくまで、生徒の主体性。
つまり、何が起きているかに気づかせることをとても大切にします。
であるがゆえに、そこに再現性が生まれる。
であるがゆえに、そこに自立性が生まれる。
そして、私はできる!と自己効力感を高めて、「自立」していってくれる。
ヨーガ・ティーチャーとして目指したいのは、
「先生、もう私は自分で立てるようになりました。なので、先生のサポートはもう必要なくなりました。ありがとうございます」
といってもらえること。
本当にこれは嬉しいこと。
名古屋でのRYT200で担当してくださった先生は昔、私の生徒でした。
そして、卒業していったという感動ストーリーがあったり、実話もたくさんあり、ご紹介したいですが、長くなるので控えますね。
生徒の自立。
本当にこれは感動的です。
<「アシスト・アジャストメント」の種類>
「アシスト・アジャストメント」の種類について。
その前に、「アシスト」「アジャストメント」を私は明確に使い分けて居ます。
それぞれに定義がある。
「アシスト」は、生徒の身体の各部位のあり方や物理的な動的エネルギーの方向に変化を加えずにサポートをすること。
「アジャストメント」は、生徒の身体の各部位のあり方や物理的な動的エネルギーの方向に変化を加え、その上で、「アシスト」をすること。
「アジャストメント」で変化を加える理由は3つ。
一つ目は、そのままだと急性あるいは慢性的な怪我に繋がる危険性がある場合。
二つ目は、変化を加えたほうが明らかに重力のかかる方向に鑑みてアーサナのエネルギーの流れが良くなると判断される場合。
三つ目は、あえてそこに導くことで生徒を意図的にエッジに持っていくと決定された場合。
<アシスト・アジャストメントの種類>
さて。やっと種類の話。
普通はアシスト・アジャストメントというと、手を触れて、ある程度の物理的介入を行って、アーサナのサポートをするものが連想されると思いますが、それだけではありません。
私は今のところ3つのアシスト・アジャストメントを掲げて居ます。
(1)ハンズオン:手なり足なりで実際に触れて物理的介入を行うもの。
(2)ヴァーバル:口頭での言語による情報的介入を行うもの。
(3)プレゼンス:内的感覚の転写によってエネルギー的介入を行うもの。
通常のRYT200講師養成講座では、(1)と(2)のみを教えています。
そして、弟子への伝授や特定の講座では、(3)を教えることがあります。
(1)と(2)はわかりやすいと思います。
往往にして、両方とも併用して、アシスト・アジャストメントを行います。
例えば、ダウンドッグで、骨盤を押し上げながら(ハンズオン)、「ハムストリングを斜め上に教えあげるようにしてみて」と口頭で伝えたり(ヴァーバル)。
(3)は、またメルマガなどで出したり、「プロフェッショナル・ティーチャーズ・クラブ」で直接伝授しますが、簡単にいうと、そこにいるだけで生徒の体が変わってしまう技術です。
<重力と効力を活かす>
アシスト・アジャストメントだけでなく、アーサナ実践においてもとても大切な実践のコツ。
それは「重力を味方につける」こと。
ボクは69kgあります。
地球上では1Gかかるから69kg。
つまり、69kg分、下にグイグイと引かれているわけですよね。
でも、沈んでいかない。
そこで位置相対的には、止まっている。
なぜでしょう?
当たり前かもしれませんが、床や地面があり、69kg分、上に押し上げてくれているからですね。
下に引かれる力を「重力」
上に押し上げてくれている力を「抗力」
と言います。
この「重力」と「抗力」が同じで拮抗しているから、ここに位置相対的に、止まっていられるわけですね。
ということは、下に行く力を増したら、上に行く力が増すことになります。
アシスト・アジャストメントでは、この力学の理解がとても重要になります。
例えば、タダアーサナで背筋を伸ばして呼吸を楽にして欲しかったらどうしますか?
上半身を上に引き伸ばすのでしょうか?
基本的にはそうはしません。
骨盤を後ほどの回で取り上げる手の使い方を用いて、下に押し下げる。
これによって、重力方向の力を増し、抗力方向の力を増すことによって、背筋が伸びて、上半身が緩み、呼吸が深くなります。
重力を味方につけて、その反動の抗力の力でアシスト・アジャストメントする。
ある意味、間接的アプローチですね。
この理解がアシスト・アジャストメントではとても大切。
生徒を観る時、重力と抗力が働いているということを観えるように訓練します。
そうすると、何をすればいいかが直観的にわかるようになり、技能が飛躍的に高まります。
そして、アーサナ実践や普段の動きの中でも、生活の普段の状態でも、このことの理解と体得は、非常に有効です。
例えば、姿勢を正していることで、抗力の働きを最大化すると、上半身が緩んで、肩こりが解消したりします。
重力を味方につけ、体のポテンシャルを最大化すること。
意識を向けてみてください。
<タッチの在り方>
「ハンズオン」でのアシスト・アジャストメントにおいて、手の在り方は非常に大切です。
必要な手の在り方。
一言で書くなら、「リアクションを起こさない手」です。
物理世界は、アクションあるところ、リアクションが返ってきます。
手がアクションを起こしてしまえば、生徒の体からはリアクションが返ってきてしまう。
ここでのリアクションとは「生徒の体の緊張」を意味します。
あなたの手がアクションを起こしてしまえば、生徒の体は緊張し、呼吸は浅くなり、結果としてアーサナの効果は薄まってしまう。
リアクションが起きると、扁桃体の発火により、闘争逃走反応が働き、交感神経優位になってしまい、安全な環境ではなくなってしまいます。
なので、あなたの手は徹底的にソフトで緩んでいる必要がある。
アクションを起こさずに、物理的介入をする必要があるわけです。
そんなこと可能なの?
って声が聞こえてきそうですが、もちろん可能です。
生徒の体の緊張を一切起こさない「手」はどのように実現するのか?
一言でいうと、それはあなたの肩や上半身が脱力していることです。
(「脱力」については別コラムがありますので、そちらをご覧ください)
そして、この上半身の脱力には、下半身がしっかりとしていることとハラが据わっていることが必須。
これは最近瞑想講師養成講座でも特に力を入れている丹田開発でもあります。
そして、流体であること。
下半身がしっかりとして、体軸が整い、ハラが据わって入れば上半身は緩んでいます。
瞑想の坐法でも必須の身体条件です。
これはまさにヨーガ・スートラいう所のアーサナの定義「安定して快適」な状態そのものと言えるでしょう。
それによって初めて、上半身が緩んで緩んだ手になる。
それが実現して初めて、上記した「リアクションを起こさない手」になる。
この時です。
生徒の体に奇跡が起きるのは。
アクションの起きないタッチで、流体から伝わってくる「効く」力の伝わり方。
そして、その中で「アシスト・アジャストメント」によって、生徒が自分一人ではたどり着けないところにたどり着く。
体を通してのヨーガの体験は、人生も変わってしまうほどの体験になります。
大げさなようでそうでない。
ヨーガ・ティーチャーの心身の状態がダイレクトに、アシスト・アジャストメントの質に響きます。
なので、日々、ティーチャー自身がヨーガを生きること。
それがあなたの日常であること。
今朝の記事で、書いたように、
「自分にとっての『日常』が、守るべき相手にとっての『非日常』であり、それを必要としているならば、それを届けることで、その守るべき相手のの問題解決になります」。
アシスト・アジャストメントを通して学べることは、無量ですね☆