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脳科学的観点から見たヨガと瞑想

脳科学的観点から見たヨガと瞑想

 

「心は脳を変えることができ、変化した脳は心を変えます」リチャード・デビッドソン(米ウィスコンシン大学教授)
「常日頃考え、思案していることはなんであれ、心の傾向となる」釈迦

1990年代は、脳活動についての研究が劇的に進みました。科学技術の発達により、様々な測定や観測が可能となり、脳の構造や機能がより鮮明に分かるようになってきました。

強い磁場を使って脳の画像を書き出す「MRI」(磁気共鳴画像法)、
脳の血管だけを抜き出して立体的に描き出すことのできる「MRA」(磁気共鳴血管造影法)、
「PET」(陽電子放射断層撮影法)
また、何と言っても大きな革命とも言えるのは、「fMRI」(機能的磁気共鳴断層撮影)の登場です。

fMRIでは、ヘモグロビンが酸素を手放す箇所が、脳の活動が活発な場所であるという事実から、ヘモグロビンの磁気的な変化をとらえ、活発に働く脳の領域の特定が可能となっています。こうした技術により、脳の活動をその場で観察できるようになりました。
また、ファンクションの見地から見る「認知科学」の発展も見逃すことができません。
1960年代以降急速に発展し、2000年以降に瞑想に関しても興味深い成果をあげる科学の一分野として「認知科学」があります。認知心理学をベースに、言語学、哲学、計算幾何学、脳神経科学などの分野を統合した、学際的な「意識の科学」と言ってもいいでしょう。


こうして、瞑想が脳に及ぼす影響がより明らかになりつつあります。

ここからいくつか、脳科学的観点から、ヨガと瞑想の効果についてみていこうと思います。

ストレス低減

 

瞑想を含む高次の精神機能に関わる認知活動は、脳の広い範囲にまたがる大きなネットワークに関わり、その大きなネットワーク活動がその下位にある細胞群の活動をトップダウン的に制御しています。
瞑想すると活性化する(専門用語で「発火」と言います)内側前頭前野、眼窩前頭前野の発火は、トップダウン的に、その下位にある大脳辺縁系の働きを制御します。

大脳辺縁系は、時に動物脳とも言われ、反応によって、基本的に不安を煽ることもある場所です。

特に、「闘争逃走反応」を起こし、過剰な警戒状態に関与する「扁桃体」による情報処理が優位な状態は、意味もなく不安な状況を引き起こします。

また、1990 年代後半に、安静時、いわゆる何もしていない状態の時に、活動量が高くなっている脳領域がいくつか存在し、それらがネットワークを持つかのように、同時に活性化することが発見されました。

このネットワークのことをデフォルトモード・ネットワーク(DMN)と言います。

DMN は通常、内側前頭前野、後部帯状回、楔前部、海馬などを含むとされています。
DMNは過去の記憶の呼び出しや将来の展望を描くのに大切な働きをしていると言われ、学習されたことが定着するために必要であると意見があります。
一方で、DMNの不安定な過活動は、とめどなく過去や未来に思いを巡らせ、不安や後悔にさいなまれるため、抑制できないと注意欠陥や課題遂行が困難になること、また、うつ病や不安障害などの精神疾患を引き起こし、慢性的なストレスの原因にもなる可能性も示唆されています。
また近い概念として「マインドワンダリング」というものもあり、これは注意散漫で考えようとしていたこと以外のことについて思いを巡らせてしまう心の迷走状態のことです。これは、幸福感の低さに関連し、ストレスの原因にもなり、また悲観が多くなるため、うつ病のリスクを高めると言われています。

こうした扁桃体の反応や不安定なDMNの働きは、ストレス要因であるということです。

しかし、ヨガや瞑想をして集中することで、この扁桃体やDMNが活動を低下させることがわかっています。

注意を向け続ける状態が適度に続くことによって、集中することで背外則前頭前野は活性化し、DMNが安定し、客観的になり、目的を持って行動することで左の前頭前野が活性化し、扁桃体の働きが抑制されるので、不安や恐れが減ります。

このため、ストレスが解消します。

ストレスが解消した状態だと、行動も変化すると考えらえます。

それによって、習慣も変化するため、人生そのものが好転することでしょう。

また、心身の健康が保たれることも想像に難くありません。また、実際に起きていることにしっかりと意識を向けることで、心の暴走によって捏造されていたストレス要因が実際はないものである、あるいは思っていたより大きなものではなかったことが直感され、ストレス低減にもなります。脳研究の学会誌「Brain Research Bulletin」に掲載された研究らによって、瞑想によってストレスが軽減されることが示唆されています。

 

幸福感の高まり


幸福感は、行動によって高まるという側面が指摘されて言います。
幸福だから笑うのか、笑うから幸福なのか。

これは脳科学では、後者だということになっている。
つまり、幸福が増す行動をすれば、幸福ということですね。

そして、また、瞑想によっても脳への好影響があり、幸福感が増すと言われています。
幸福感が高い人はまたどんどん行動するということになりますから、能力もどんどん開発されていくことでしょう。
また幸福感が高いということは、自己肯定感が高くなりますから、これも大切な要因ですね。

瞑想によって(集中して随意的な呼吸を行う)ことによって、セロトニン神経が活性化し、セロトニンの分泌が促進されます。セロトニンは幸せを感じる脳内分泌物質とも言われ、満たされた幸福感をもたらします。
また、体性感覚を抑制し、自他の隔たり感覚が減るとも言われ、つながりを求める人間にとっては、安心感を助長することにもなります。

左側の前頭前野は、活性化することで人は楽観的になり、また快の予測をするときに働くとされる部位で、頭頂葉との発火相関関係が見られます。
そして、集中型のサマタ瞑想では頭頂葉の活動低下が起こり、左側の前頭前野が活性化され、幸福感の増大も期待されます。

また、冷静な客観的視点を得ることで、誤謬や心が起こす不必要なストーリー展開などから解放されるため、もともとある幸せの感覚に触れやすくなります。
さらには、自己理解が進み、自分が一番自然に幸せな状態や価値観がはっきりと分かれば(最高価値の発見)、生きるのが圧倒的に自然で楽になり、また努力なしに成功が訪れるような状態を起こすことも可能です。

 

集中力の向上

普段私たちはどれくらいの集中力を保っているのでしょうか?
定量的にそれを導き出すのは難しいことですが、集中をしていない状態で生活をすることによる生産性の低下は、人生に大きな影響をもたらすことでしょう。

瞑想を行うことで、集中力が高まります。また、集中していないことにも気づけるようになります。

その理由は、瞑想の実践によって、前頭前野が活性化し、ストレス反応を起こす大脳辺縁系の該当部位の働きが抑制されます。そうして、不安などが収まり、集中を妨げる要因が減るからです。

また、背外側前頭前野など、注意がそれたらそれに気づき、注意を戻し、そして継続するという脳の部位の発火が促されることも集中力向上の要因として考えられます。
呼吸法によるセロトニン神経の活性化によって静かな覚醒や精神安定が起きることもその要因でしょう。

また、集中瞑想を行うと、島皮質前部などの働きにより、集中していないこと気づけるようになります。これによって、また作業対象に集中することができることも大きなメリットでしょう。
集中せずに、他のことを考えていたり、エネルギーが分散していてはその生産性に差が出ることは明白でしょう。
ワシントン大学で行われた研究では、瞑想が生産性を向上させ、集中しやすくすることが明らかになっています。

 


記憶力の向上

私たちは自分の心のフィルターを通して世の中を見ています。
言い換えれば、あなたの世界の中で見えていることは、あなたの知っていて重要だと認識していること。

これは次回にも出てくる、これは自分にとって重要度の高いものを認知することを可能にする「脳幹網様体賦活系」という脳のシステムによるもので、知識のないものは見ることができません。
また知識の中でも理性的に「見ていい」と脳が判断したものだけを見ることができます。

納得していないものは見ることができない。
許可した瞬間に見えるようになる。

またこれは、言い換えれば、知れば知るほど、世界の中で見えるものが多くなるということ。
そういう意味では、学習が世界を広げてくれます。
学習で人間は進化できる。

そして、知っている上で、ありのままをそのままに観る。
可能性しかないことがわかり、圧倒的なエネルギーが出てくること。
これがある意味、瞑想の極みであると言ってもいいでしょう。

瞑想の集中や気づきの状態でいる時には、背外側前頭前野が活性化します。
背外側前頭前野は、高度な情報処理、ワーキングメモリー機能を持つ部位で、学習、記憶、自己認識の中枢となる海馬と密接に関わり、記憶を促進します。

また、関心のあることならば前頭前野は、それを重要と認識し、海馬に記憶指令を出します。
そうすると、腹側被蓋野がドーパミンを出し、それがさらに海馬を活性化し、それにアセチルコリンが加わると脳が調和して、記憶が明確になると言われています。

また、ニューロンの新生は海馬で生涯を通じて起きると言われており。瞑想によって、海馬で灰白質の密度が増加することが明らかになりました。
また、瞑想は、睡眠の質の向上や集中力向上が見込まれるため、記憶力が増すことが大いに期待されます。

このように脳科学の分野でも、ヨガと瞑想の実践によって、ストレス低減のみならず、あなたの人生の質を高める多大な効果が期待できるのです。

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